※2023年2月7日 一部修正しました。
前回のブログでは、本多静六さんの資産形成方法について解説しました。
大学教授という立場で100億円の資産を作った本多さんは、現代で言えば「勝ち組」でしょう。
では、現代に生きる我々が本多さんのように勝ち組になることはできるのでしょうか?
全く同じになるのは難しいとしても、方法次第では「勝ち組になれる」と私は思います。
今回のブログでは、「本多静六さんの行った投資手法を現代にアレンジして行うとしたらどのような方法が考えられるか?」を考えてみます。
なお、投資はあくまで自己責任になります。必ずうまくいくということも無いのでご注意ください。
我々FPはアドバイスは可能なので、実践してみようと思われた場合は無料相談もご利用ください
本多静六さんの資産形成方法とは?現代で行うのは難しい?
まずは本多静六さんの資産形成方法をおさらいしておきましょう。
②それをひたすら続けて資産の核を作る
③ある程度核ができてきたら預金より率のいいものに資産を変えていく
方法としては至ってシンプルな方法です。
本多静六さんは「株式投資」を選択し、ルールに従って売買をしていきます。
並行して「山林買収」も行いました。安く買った山林が70倍の値段になったそうです。
結果、100億円の資産を作ることに成功しました。
ですが、本多さんの方法を現代で行うことは難しいと思います。理由について説明します。
山林買収で利益を見込むのは難しい
1つ目の理由は「山林買収で大きな値上がりを期待するのが難しい」ことです。
本多さんが生きた時代は明治~昭和の時代です。
山林が70倍で売れたのも、当時日露戦争が始まり、木材の特需があったことが原因でした。
現代はというと、森林伐採は深刻な問題となっているので木材の特需が起こることは考えにくいでしょう。
また、交通機関なども十分に発達しているので、今残っている土地は本当に山奥の土地ということになります。
したがって、本多さんのときのように山林投資で大幅な利益を見込むのは非現実的といえます。
可能性があるとしたら、アウトドアブームに便乗してキャンプ場を作って付加価値を見込むとか、トリュフが取れて話題になって価値が上がったとかですが、おそらく難しいでしょう。
株式投資でそこまで大きな利益を取るのが難しい
2つ目の理由は「株式投資でそこまで大きな利益を取るのが難しい」ことです。
誤解のないように言っておきますが、株式投資自体は資産形成において非常に有効な方法です。日本国民全員が行ったほうがいいと私も考えています。
ここで伝えたいのは「大きな利益を取るのが難しい」ということです。
本多さんは留学先のドイツの教授の教えのもと、鉄道会社の株を購入して大きな利益を得ることができました。
しかし現在、交通網は発達しきってしまっており、本多さんの時代のように2.5倍になったというようなことは全く期待できません。
また、当時と比較すると日本経済全体の成長速度も異なるため、株式投資で当時と同じレベルの利益を求めることは非常に難しいです。
当時の株式投資と同じ利益を求めるとした場合、更にリスクの高い投資を行う必要がありますが、大きく損失を出してしまったり、詐欺にあう可能性もあるのでおすすめできません。
以上の2つの理由から、本多静六さんと全く同じ成果を出すことは現代では難しいと言えるでしょう。
現代版「本多流資産形成法」
では、本多さんの資産形成方法は現代では全く使えないのでしょうか?
そんな事はありません。むしろ現代でも使えるノウハウのほうが多いです。
ここからは「本多静六さんの資産形成方法を現代版にアレンジするとどうなるのか」を私なりに考えてみたいと思います。
本多さんは25歳から資産形成をスタートさせたので、ここでも25歳の方を例にとって紹介していきます。
「4分の1貯蓄法」を現代で実践してみよう
「4分の1貯蓄法」から解説していきます。
本多さんの資産形成方法のうち核となるのは、間違いなく「4分の1貯蓄法」です。
簡単に説明すると「給料の4分の1と、臨時収入のすべてを貯蓄する」という方法のことをいいます。
まずは4分の1貯蓄法を使って、資産形成の原資を作っていきます。
貯蓄額の目安は「120万円/年」
dodaの行った調査によれば、20代の平均年収は348万円だそうです。
貯蓄額を計算すると、このようになります。
・ボーナス手取り32万円くらい×2回
・手取りの4分の1を貯蓄に回すので、毎月7.2万円 + ボーナス32万円 =118.4万円
上記のように、毎年118.4万円が貯蓄に回す金額となります。
「自動引去での積立投資」のススメ
次に、118.4万円をどこに置いておくかについて考えてみましょう。
本多さんの時代と違い、現在の日本は歴史的な超低金利なので、銀行にそのまま預金としておいておくのはおすすめできません。
そこで、本多さんの時代にはなかった2つの仕組みを使います。
それは「自動振替」と「積立投資」です。
この2つの組み合わせはかなり強力な資産形成方法です。しかもリスクも押さえられるので、まだやっていない人は今すぐにでも始めることをおすすめします。
方法はとても簡単です。
証券会社で口座を作り、毎月の給料が振り込まれたら、そのうち7.2万円は自動的に積立投資に回るように設定しておきます。こういった設定はほとんどの証券会社で可能です。
みなさんの会社の給料日に合わせて引去りの日を調整するようにしましょう。
ボーナスについては、振り込まれた月に32万円を投資に回すようにします。
証券会社によっては、通常月とボーナス月で引去金額を別で設定できる会社もありますので、設定できる場合は使いましょう。
このように、本多さんの方法と現代の方法を合わせることで、相乗効果を生み出すことが可能になります。
積立投資を「キャピタル世界株式ファンド」で行う
給料から自動引去りで積立投資を行う際、どの銘柄を選べばいいのでしょうか。
ここでは私がおすすめする投資信託の選び方について解説します。
また、積立投資のおすすめ投資信託はこちらの記事にもまとめてありますので、そちらも合わせてご確認ください。
【参考】: 積立投資におすすめの銘柄は?積立投資におすすめの投資信託3選(2022年8月)
今回のように長期の資産形成を行う場合、選ぶ際の基準は2つです。
その間の実績はプラスになっているか
今回は、この2つの条件を両方とも満たしているキャピタル・インターナショナル株式会社の「キャピタル世界株式ファンド」を使ってシミュレーションをおこないます。
1970年代より運用を行っている投資信託であり、その間の実績も大きなプラスとなっています。
キャピタル社のホームページに掲載されている、40年間の実績は下記のとおりです。
40年間で4800万円が4億5000万円になっています。
預金にしておくと全く増えませんが、キャピタル世界株式ファンドで積立投資を行うことでまとまった原資が作れそうですね。
ただし、運用によってはマイナスになるタイミングもありますので、この後に紹介する投資を行うために解約するときはタイミングに注意しましょう
【番外編】NISAをうまく活用する
積立投資を行うときには「つみたてNISA」を利用するのもおすすめです。
そもそもNISAとは「一定の買付金額までであれば、株式や投資信託の売却の利益を非課税で受け取れる」制度です。
つみたてNISAは年間40万円まで非課税で投資ができて、20年間非課税期間が続きます。
ただ、対象商品が限られていますので注意しましょう。
ちなみに「キャピタル世界株式ファンド」はつみたてNISAの対象銘柄ではありません。
この制度を上手に使うことで、運用した利益を非課税で受け取れますので、積極的に使うことをおすすめします。
2024年1月からは新NISA制度もはじまり、非課税限度額も大きくなるので更におおきな効果が期待できます。
※新NISAについてはこちらの記事をご覧ください。
「株式投資」を現代で行う
ある程度まとまったお金ができてきたら、「個別株投資」も行っていきます。
間違っても最初から個別株投資は行わないでください。
なぜかというと、「知識の無いまま個別株投資を行っても安定的な成果を見込むことができないから」です。
まずは4分の1貯蓄法とキャピタル世界株式ファンドへの積立投資を行うことで、原資を貯めながら投資についての知識をつけましょう。
ここからは、個別株投資の現代版アレンジについて解説していきます。
「まとまったお金」の目安は「1000万円」
まず、どのくらいのお金がたまったら個別株投資を行うのがいいかを解説します。
目安としては「資産1000万を達成した時点」です。
本多さんも著書の中でこのように述べています。
どんなにつらい思いをしても、まず1000円をお貯めなさい。ー今日ならさしずめ10万円というところかー1000円貯れば、たちまち5000円たまり、5000円貯ればまもなく10000円にはいとやすいことである
本多さんの時代との物価の差を考慮すると、当時の1000円は現代に置き換えると1000万円程度の価値になります。
したがって、まずは1000万円の資産を作ることを目標としましょう。
投資先の選び方は?
個別株投資では「投資先の選び方」が非常に大切です。
投資先の選び方には「これをやればうまくいく」といった正解はありません。自分の考えや世界経済の動向・国内経済の動向・企業業績を分析した上で、仮説を積み重ねていくことが必要になります。
本多さんは「日本鉄道株(現在でいうJR東日本株)」で大きな利益を得ることに成功しました。
購入した理由は、ドイツに留学していたときの指導教官からの「日本でも鉄道網は更に広まっていくから買っておけ」というアドバイスだったそうです。
現代ではこういった株式を見つけるのはなかなか難しいので、本多さんも注目していた「配当」というところに焦点を置いて銘柄を探してみます。
選定ルールはこの3つです。
②時価総額1000億以上
③配当利回り5%以上
「潰れないで配当収入が期待できる会社」という観点から探すと、9社ほど該当しました。
その中の1社が「ソフトバンク株式会社」です。
ソフトバンク株式会社の時価総額は6兆7000億円強で、配当利回りは6.10%です。
年間配当金額 30万円
株価上昇による含み益(キャピタルゲイン) 35万円
※2020年9月の株価と2022年9月の株価比較
年間期待利回り 16%(税金は考慮していません)
値上がり益ももちろんですが、配当がもらえるので安定的な収益が見込めるようになります。
ソフトバンクの株式を1億円購入すれば、年間の配当が610万円入ってくるのはかなり大きいです。
売却のタイミングはどこか
個別株投資は、売却のタイミングがとてもむずかしいです。
売却については「自分の中でルールを決めてその通りに行動する」ことがただ1つの正解です。
本多さんは現物ではなく「先物取引の買い」で投資を行っておりました。簡単にいえば、通常の株式投資よりもリスクもリターンも高くなる方法です。
※先物取引について詳しく知りたい方は、こちらのページがおすすめです。
本多さんはリスク管理のために、「引き渡しまでに2割増えたら転売。保有している中で10割増えたら半分売却」というルールを決めてその通りに売買を行っていたようです。
売却のタイミングがわからない場合は、配当金目的で保有して売却をしないというのも1つの方法かと思います。
自分の資産の使い方
資産をある程度築くことができた後の「その資産の使い方」についても触れてみます。
自分の資産なので、使い方は個人の自由です。
ですが、私が資産形成をしたい相談者に伝えるのは「なんのために資産形成をするのか明確になってから投資を始めましょう」ということです。
本多静六さんは、このように述べています。
財産のこしらえ方も難しいが、財産の上手な使い方はさらに難しい。
本多静六さんは最終的に、最低限の資産を残して寄付をしました。
また、本多静六さんの本によく登場する安田善治郎(安田財閥を作った人)も、このような言葉を残しています。
『財産はいくら積んだとて、あの世へ持っていけるものでもない』
大きな資産を作ることができ、世間的には成功者として見られる人も、自分のお金の使い方には困っていたことがわかります。
したがって「なんのために資産を作るのか」がないまま投資を始めたとしても、本当の満足には繋がりません。
本多さんは常にこのように言っていたそうです。
月一万円の生活をする人が二万円の生活にこぎつけても幸福は二倍にならぬし、十万円の財産に達しても、ただそれだけではなんらの幸福倍化にはならない
資産を作ることが目的になってしまわないよう、自分が何をしているときに幸せと感じるかを見つけましょう。
まとめ
前回に引き続いて本多静六さんについて解説しました。
現代版本多静六流資産形成法をまとめると、このようになります。
②1000万円たまったら半分くらいの金額を配当重視の個別株投資に移行
③上記2つの方法を継続する
あくまで家庭ではありますが、キャピタル世界株式ファンドのシミュレーションだと34年後に2億円の資産ができますので、1億円個別株を買えるようになります。
仮に6%の配当がもらえる株式を1億円分購入すれば、年間600万円の配当収入が見込めます。
25歳から始めた場合、うまくいったら59歳のときに資産2億円かつ不労所得600万になれますね。
まずは「4分の1貯蓄法」の実践から始めてみましょう。
難しいようであれば、5分の1や6分の1でもいいので、決めた金額を貯蓄に回してみましょう。
家計の見直しがなかなかうまくいかない場合や、なかなか始めることができない場合は当事務所の無料相談もご利用ください。
最後までまご覧いただきましてありがとうございました。