生命保険には多くの方が加入していると思います。皆さんはどのような経路で生命保険に加入されましたか?
コロナの影響で、営業のやり方も「オンライン」や「非対面」が多くなりました。ただ、生命保険については保険ショップや保険募集人などと直接対面して加入される人がまだまだ多いです。
2021年頃より、大手生命保険会社も採用人数を減らし、営業体制の改革をはかっているようです。しかし、まだまだ昔ながらの営業手法が多く使われています。
今回は生命保険の営業について少し考えてみようと思います。テーマが大きいので2回に分けます。
第1回目の今回は、生命保険営業の特徴と、なぜ難しいと言われるのかについて解説していきます。
生命保険の営業ってどんな仕事?
生命保険の営業の仕事は「生命保険商品を販売すること」です。
ただ、ほかの業界の営業と金融業界の営業には決定的な違いがあります。
それは「商品が目に見えるかどうか」です。
生命保険をはじめとした金融商品は形がありません。したがって「商品の魅力を伝えて興味を持ってもらう」ことが、目に見える商品と比較すると難しいといわれます。
保険業界出身のスーパー営業マンが書いた本は世の中に溢れていますので、それらの内容に触れつつ保険営業の方法について解説します。
営業論①「どうやってお客様を見つけているのか?」
生命保険は「形がない」ものであり、「不幸があったときに役に立つ」ため、営業するのは難しいと言われます。
まずは、保険営業マンがどうやってお客様を見つけているのかについて考えてみたいと思います。
見込み客開拓の心構え
それは、「生命保険の見込み客は『すでに生命保険に入っている人』」ということです。
生命保険文化センターが発行している「平成30年 生命保険に関する全国実態調査」によれば、
世帯加入率 88.7%
加入件数 3.9件
支払保険料平均 38.2万円/年
保障に充足感あり 46.1%
つまりほとんどの人が生命保険に加入していて、すでに結構な保険料を払っているわけです。
言い換えれば、「生命保険は入るものだ」と多くの人が思っているということですね。
こんなに広く浸透している商品も珍しいです。
しかも、高い保険料を払っているのにも関わらず、半分の人はまだまだ保障が足りないと思っているわけです。
その方々の不満を聞いて新たなプランを話せば、おそらく加入してもらえそうですよね。
つまり、4人の人に「保険に加入しているか?」と「今の保障内容で十分だと思うか?」を聞けば、1名は見込み客になってくれる計算になります。
入社すると身内の保険加入をさせられる?
「生命保険会社に入ると身内に加入の案内をさせられる」と言われます。
これは半分ウソですが半分本当です。
行き先や見込み客が十分ある人はそこで販売すればいいわけです。
保険会社が興味があるのは「保険料がいくらで保障額がいくらの契約か」であって、「どこから取った契約か」ではありません。
行き先がない方が身内への案内を(半強制的に)すすめられるわけですが、
これもよく考えれば当たり前なわけです。
・ほとんどの人が入っていて必要性を感じているのに
半分の人が満足していない。
・商品が見えないのでなかなか伝えるのが難しい
こんな商品を誰に売るかと聞かれたら、
間違いなく話しやすい周りの人に声をかけまくることをすすめられますよね。
だから身内に「保険の見直しをしませんか?」という声掛けをしていくのが
保険営業の王道になるわけです。
ちなみにここで、結構多くの方が犯す間違いがあります。
この段階で「保険に入っていない人を探している人」は地獄です。
ここまで生命保険が浸透している中で入っていない人は
よほどのことがない限り入らないでしょう。
こういった最初の段階で間違えてしまった方が
うまく行かなくてやめてしまうので、
「身内に加入の案内をさせられた」という
マイナスなイメージになってしまうんだと思います。
このようにしてお客様になってくれる人を探していきます。
さらに、生命保険営業には必殺の武器があります。
営業論②「G・N・P」
さて、「G・N・P」とは何でしょうか?
もちろん「Gross National Products(国民総生産)」ではありません。
「義理・人情・プレゼント」のG・N・Pです。
お客さんのお子さんのお見合い相手を探したり、知り合いを紹介したり紹介されたり、近くに行ったらお土産を持って行ったり・・・
古いタイプの営業だと思いますか?
実はまだまだこういったことは行われています。
これらは営業成果に大きな影響を与えますし、コミュニケーションを大切にする世界では重要なことです。
私ももちろん否定するつもりはありません。
ただ何事もやりすぎると問題になります。
一時期の生命保険営業はこれらをやりすぎたことで、業界自体の評判を著しく落としてしまいました。
だからかもしれませんが「保険営業=しつこい・なれなれしい」というイメージはまだまだ健在ですよね。
このようなことが生命保険営業の特徴と言われています。
番外編「生命保険と損害保険の違い」
保険は「生命保険」だけではなく「損害保険」もあります。
ここまで書いてきたのは「生命保険営業」の特徴です。
同じ保険でも営業が違うのはなんで?
これは私も最初は疑問に思っていました。
損害保険の営業の方でも、生命保険営業と同じことをする人もいるかもしれませんが、基本的な営業スタイルは全く違います。
商品性とか会社の成り立ちとかを書いていくときりがないので、一つだけお伝えします。
生命保険はフロービジネス・損害保険はストックビジネスという違いがあります。
損害保険は短期の契約です。
一度契約いただくと、更新していただけるかぎり販売手数料が発生します。
つまり一定のお客様ができれば、そこまで新たなお客様を探さなくても収入は確保できます。
生命保険は長期の契約です。
契約いただくと10年程度で手数料が切れます。
つまり、常に新しいお客様を探し続ける必要があります。
その分、もらえる手数料は損害保険より大きいです。
お客様の開拓方法や商談のテクニックの本の著者に生命保険の営業マンが多いのは、扱う商品と営業スタイルの影響が大きいです。
営業論③「やりがいと大変さ」
よく、「生命保険の営業はきつい」と言われます。
それは本当なのでしょうか?
「きつい」「きつくない」の基準は人によりますので、一般的な話になりますが、個人的には「ほかの業界の営業と変わらない」と思います。
商品が違うだけで、やっていることは他業界の営業と全く変わりません。目に見えないからメリットがわかりにくいなどの特徴はあるかもしれませんが・・・。
ではなんで「保険営業はきつい」というイメージがあるのでしょうか?
それはおそらく「給与体系と採用体系」にあるのだと思います。
給与体系ですが、基本は業績連動です。
勤務する会社によるところもありますが、ほとんどの会社が「固定部分」と「業績連動部分」の2階建てです。
その中でも固定部分はだんだん減っていきます。
業績連動部分は契約が取れれば青天井ですが、全く取れなければ0のままです。
入ってくるお金が少なくなると、人は非常に大きいストレスを感じます。
それに加えて契約が取れなくなると、会社の上司からのプレッシャーでもストレスが溜まります。
こういった負のスパイラルが起こって結局やめてしまうということが、「保険営業=きつい」というイメージを植え付けた原因の1つだと思います。
もうひとつの原因は採用体系です。
私はこれが一番の問題だと考えています。
・・・・ただこれについて書いていくとかなりの量になってしまうので、今日はここまでにしたいと思います。
次回のブログでは、「四大生保」と言われる大手四社の採用戦略から、保険業界の問題点について書いてみようと思います。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。